Yezo Brown Bear Lab

根室の薬缶熊

北海道熊物語

明治初年、根室の穂香村にアイヌの年寄夫婦が住んでいた。
逃げる じいさんは根室の町へ買い物へ出かけた。

留守居のばあさんは炉の火にあたりながら手仕事をしていた。
炉には大きな薬缶が煮えたぎっていた。
その時何やら入り口から入ってくるものがある。
じいさんが帰ってくるにはまだ早いと何気なく見ると、7尺もあろうかと思われる大グマがのっそりのっそりと入ってくるではないか。

ばあさんは腰も抜かさんばかりに驚き「ワッ」と声を立てて逃げ出そうとするが、熊もその声に驚き 牙をならし爪を立てばあさんを食い殺そうと飛びかかった。
ばあさんは炉の周りを逃げ回る。熊は3、4回これを追いかけたが熊の身体は肥え太っているので、炉のような小さなものを回るにはあまり早くない。
そこで熊はもどかしがって炉を飛び越えてばあさんに飛びかかってきたが、前脚の爪が炉にかかっていた薬缶のかぎにひっかかって、前脚を煮え立っている薬缶の中に踏みこんだのでたまらない。

熊は熱さのため狂気のように騒ぎ回るが薬缶は抜けない。
薬缶熊 とうとうたまりかねて、ガッタラガッタラ薬缶をはいたまま逃げて行った。
一方じいさんが用事を済ませて帰って見ると家の周りに大きな熊の足跡があるので、てっきりばあさんは熊に食い殺されたと思ったが、ばあさんは無事だった。

一部始終をばあさんから聞いたじいさんは、早速部落の人に知らせ鉄砲や弓矢を持って追いかけた。
熊は五、六町奥の沢の中で薬缶の下駄を脱ごうともがいていた。
これを見つけた人々が近寄っていくが、熊は足の痛みで動けない。
とうとう鉄砲や弓矢の的になってたおされてしまった。

(根室町 Nさん)

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