牛を襲い続ける忍者ヒグマOSO18
標茶と厚岸町で牛食いグマが2019年~2022年にわたって多くの牛を襲撃しています。
前足幅が18cmもある巨大グマで最初の被害がオソツベツのため、コードネームはOSO18。
箱罠には入らず、人の前にはなかなか姿を現さない老獪なオスヒグマです。
OSO18が出没していたのは北海道東部の標茶と厚岸町です。最後は釧路町の放牧地で駆除されました
目次
OSO18釧路町でついに駆除される、前足幅は20cm
標茶と厚岸町で牛を襲い続けていたOSO18ですが、ついに駆除されました。
- 駆除日時:2023/7/30 午前5時頃
- 駆除場所:釧路町仙鳳趾村オタクパウシの放牧地
- 性別:オス
- 体長:2.1m
- 年齢:9歳6ヶ月
- 前足幅:20cm
- 体重:330kg
- 状態:痩せて、手足に皮膚病、頭部に4ヶ所の傷、片耳千切れる
OSO18の名前の由来にもなった前足幅は最近では16~17cm説もありましたが、なんと20cmもあったとのこと。
実はOSO20だったわけですね。
最近は普通サイズのクマであるとも推測されていましたが、大型のクマでした。
あれほど人間を警戒して姿を見せなかったOSOですが、釧路町の放牧地に7/28から現れ7/30には放牧地に伏せており、人を見ても逃げなかったとのことからハンターに駆除されたそうです。
痩せ気味で頭部に傷があり片耳も千切れていたとのこと。
繁殖期に別のオスと争い傷つけられ、あるいは子連れの母グマと争い弱っていたと推測されています。
体毛のDNA鑑定の結果、OSO18だったと判明。
ハンターの方はOSOと知らずに駆除したのです。
その後OSOは解体され、ジビエとして飲食店で提供されたようです。
OSO18による被害表・グラフ
[2023年6月28日現在]
2023年もOSOは活動を始めてしまいました。
2023年の冬眠明けを狙うという話でしたが、2023年6月24日に標茶で牛が襲われ死亡。
DNA鑑定の結果OSO18と判明しました。
西暦別・月別OSO18被害グラフ
2019年から始まったOSO18による牛の被害。
2019が最も多く、2020は少しおさまり2021にまた被害が拡大しています。
2023年6月28日現在、OSO18に襲われた牛は66頭です
OSO18による牛の被害頭数が最も多いのは8月。
やはりクマのエサが少なくなる端境期がピークですね。
ヒグマの食べものについては以下の記事をご覧ください。
OSO18による被害グラフ
OSO18による被害は2019に標茶町から始まり、2021には隣の厚岸町にも広がりました。
標茶では阿歴内や茶安別の牧場が襲撃されています。
OSO18に襲われたヒグマは全頭死亡しているわけではありません。
死亡と負傷はちょうど半数くらいですね。
牛食いヒグマOSO18はどんなヒグマ?
OSO18が人間の前に姿を現したのは初被害のオソツベツでのたった1度のみ。
その後は2019年8月と2022年7月に自動撮影カメラで撮影され、2023年6月25日には初めてカラーでOSOの姿が撮影されました。
OSO18関連の動画は以下の記事をご覧ください。
足幅や体毛によるDNA、カメラに写った姿などから推測するOSO18の特徴。
- 性別:オス♂
- 前足幅:16~17cm
- 体長:2.2m
- 体高:1.2m
- 推定体重:200~300kg
- 年齢:推定10歳前後
前足幅が16~18cmの巨大なオスグマです。
(※コードネームOSO18の元になった前足幅ですが、最近の足跡計測では16~17cmとのことです⇒駆除後20cmもあったことが判明しました。)
ヒグマは前足幅から大きさを推測できます。
かなりの怪力で200kgもある牛を真っ二つに引き裂く怪力ヒグマです。
OSOは普通のヒグマではない?
OSO18は普通のヒグマではありません。
以下のような点から特殊で老獪かつ慎重なヒグマであることがわかります。
- 箱わなに入らない
- 自分の獲物に執着しない
- 土饅頭を作らない
- 慎重かつ大胆で忍者のよう
- 牛を食べず弄んで殺すときもある
- モンスターウルフが効かない?
- 電気牧柵を避けて侵入
OSOは箱わなには入らないヒグマです。
箱わなをしかけても罠にかかるのは別の若いオスグマばかり。
幼少期に母や兄弟が箱わなに入るのを見ているのでは?と専門家が推測しています。
もし本当にそうであれば、箱わなに入らないだけではなく人間への恨みもあるかもしれません。
箱わなは中にクマの好きな食べ物(肉やはちみつ)を入れて誘引して捕獲する箱型の罠)
ヒグマは自分のエサと認識したものには非常に執着します。
日高カムエクの加害グマも被害者のキスリングに執着し、三毛別の加害グマも死体に執着し・・・
しかしこのOSOは食べかけの牛に執着しません。
そのためえさ場に執着する習性を活かした箱罠設置が効果を発揮しません。
更にヒグマが食べ残しを埋めて隠す土饅頭もOSOは作りません。
※2021年以降のOSOは食べかけの獲物を移動させたり、ハンターの隙をついての死骸を持っていったりしているようです。
2022年は1週間後に再来訪した形跡もあるようです。
ハンターもOSO18は「普通のヒグマとは違う」と評しています。
OSO18は非常に慎重な性格で、ハンターが銃器を使えない夜間にのみ行動するため「忍者」とも呼ばれています。
人間に目撃されたのは一番初めの2019年7月16日夕方の標茶町オソツベツのみ。
あとは2度自動撮影カメラで巨体を撮影されただけです。
専門家はOSO18が沢沿いを移動するため更に人目に付きにくいと指摘しています。
殺された牛の多くは食害されていますが、食害されていない牛もいます。
食べるために殺すのではなく、弄ぶために殺されたような牛もいます。
音を発し動いて野生動物を追い払う機械モンスターウルフが設置された牧場にも侵入しました。
OSOはモンスターウルフに慣れたのかもしれませんし、牧場は広いためモンスターウルフの効果も低いのでしょう。
2022はOSO避けに設置された電気牧柵の下を掘って牧場に侵入しました。
本当に老獪なヒグマです。
町単位では手に負えない怪物OSO
OSOによる被害は標茶町だけではなく隣接する厚岸町にも広がりました。
標茶町と厚岸町と北海道。
さらにヒグマの専門家で「OSO18捕獲対応推進本部」を立ち上げ対策に臨んでいます。
音や光で威嚇するモンスターウルフを被害場所に設置したり、OSOが活動する夜に拡声器を使ってラジオを鳴らす装置を設置するなどの対策が試みられています。
OSOは厚岸町の上尾幌の森林に冬眠している可能性が高いと専門家は推測しています
銃器での駆除はヒグマの動きが鈍い冬眠明けがねらい目ですが、ヒグマの頭がい骨は跳弾する可能性もあり、巨大グマのOSOを仕留めるのは非常に難しいと思われます。
今後OSOの牛襲撃を目撃した他のクマが真似をする可能性やOSOの遺伝子を引き継いだ子が家畜を襲う可能性もあります。
OSOのせいで牧場経営をやめる牧場主もいるとのことです。
2022年7月現在OSO18は捕獲されていませんが、体毛を採取するヘアトラップや自動カメラの設置でOSOの行動範囲の特定、箱罠の形状の変更などで対策を強化するとのことです。
現在のOSO18対策。
- 行動域の特定(ヘアトラップ・自動カメラ)
- 冬眠地の特定(足跡などから大型個体を追跡)
- 箱わなでの捕獲(形状変更・他の小型捕獲個体は放獣)
- 電気柵の設置
- 威嚇装置の設置
OSO18との戦いはいつまで続く?
箱わなや電気柵を回避し、忍者のように夜間行動するあまりにも老獪なOSO18。
10歳前後と推測されるため、OSOが寿命で死ぬか他のオスとの縄張り争いに負けて移動するかを待つしかないという悲観論もあるようです。
2022年7月、OSO同様に老獪な羅臼の犬食いグマRTが箱わなに入って捕獲されました。
老齢で痩せていたとのこと。
夏季の食糧不足に耐え切れず今まで入らなかった箱わなに入ったのかもしれません。
OSOもRTのようにいつか箱わなに入るのでしょうか。
それとも他のオスとの生存競争に負けて他の地域に移るのでしょうか。
羅臼の犬食いグマRTについては以下の記事をご覧ください。
オスのクマの寿命は15~20歳とのことですが、ルシャのオレンジ(34歳)のことを考えるとOSOもそのくらい長生きするかもしれません・・・
ヒグマの年齢については以下の記事をご覧ください。
ルシャの王オレンジについては以下の記事をご覧ください。
2019年のOSO18による被害(28頭)
OSO18によるすべての事件は拾えていませんが、わかる範囲で記事にまとめます。
2019年のOSO18による被害は死亡12、負傷14、不明2の合計28頭です。
2019/7/16 標茶町オソツベツ
標茶町オソツベツの牧場でヒグマが乳牛1頭を襲っているのが目撃された。
乳牛は内臓が食べられ首を折られて死亡し、クマは逃亡した。
最初の被害がオソツベツ。足幅18cmと測定されたため、コードネームはOSO(オソ)18(じゅうはち)
2019/8/5~/8/6 標茶町久著呂・上茶安別
8月5日標茶町久著呂の牧場で牛3頭がクマに襲われ死亡、4頭が負傷。
8月6日までに上茶安別の牧場でも牛3頭がクマに襲われ死亡、1頭が負傷しているのが発見。
2019/8/19 標茶町茶安別
8月19日標茶町で肉牛3頭がヒグマにより負傷。
2020年OSO18による被害(5頭)
詳細データはありませんが、OSO18は2020年も牛を5頭襲っています。
2020年のOSO18による被害は死亡5の合計5頭です。
2021年OSO18による被害(24頭)
2021年のOSO18による被害は死亡9、負傷15の合計24頭です。
2021/7/16 厚岸町セタニウシ
7月16日厚岸町セタニウシの牧場で乳牛3頭がヒグマに襲われ死亡。
牛の死骸には腹に噛まれ、爪痕が背中にあった。
2021/7/23 厚岸町片無去
厚岸町片無去の牧場で牛1頭が腹を裂かれ死亡しているのが見つかった。
2021/8/12 厚岸町セタニウシ
8月12日厚岸町セタニウシの牧場で乳牛4頭が襲われた。
2頭は死亡し、1頭は重傷、1頭は軽傷。
2021/8/15 厚岸町大別
8月15日厚岸町大別の牧場で乳牛1頭がヒグマに襲われ死亡しているのが発見された。
頭部と臀部以外を食べられていた。
2022年OSO18による被害(6頭)
2022年のOSO18による被害は死亡4、負傷1の合計5頭です。
2022/7/1 標茶町阿歴内
7月1日阿歴内の牧場で牛3頭が襲われ、2頭が死亡。
付近に残された体毛のDNAから加害グマはOSO18と判明。
牛の内臓が食われ、背中に噛み痕や引っ掻いた傷が残っていた。
2022/7/11 標茶町茶安別
7月11日標茶町茶安別の牧場で乳牛1頭がヒグマに襲われ死亡しているのが発見された。
牛は腹を破られ内臓を食われていた。
モンスターウルフが設置されてあった場所だった。
この時OSOは食べかけの牛の死骸を移動させている。
2022/7/18 標茶町茶安別
7月18日茶安別の牧場で乳牛が襲われ死亡しているのが発見された。
腹がえぐられ食痕があった。
足跡が18センチ近くあり、OSO18に襲われたものと見られている。
7月11日に被害があった牧場からわずか3キロしか離れていない牧場であった。
野生動物よけの電気牧柵の下を掘っている。
電気牧柵は触れると痛みを感じるため、普通の野生動物は柵に触れると去っていく。
しかし、OSOは電気を感じながらも地面を掘り牧場内に侵入したとみられている。
2022/7/27 標茶町阿歴内
7月27日標茶町阿歴内の牧場で乳牛がヒグマに襲われ死亡しているのが発見された。
腹部はクマに食べられ、背中は引っかかれていた。
牛は屋外運動場に入れられていたが、OSO18に引きずりだされて襲われた。
2022/8/18 標茶町茶安別
8月18日標茶町茶安別の牧場で3歳のメスの乳牛がクマに襲われた。
牛の首付近には噛まれたような痕跡があった。
体毛が残っておらずDNA鑑定は不可能だが、幅約17センチの足跡が残されていた。
2022/8/20 厚岸町上尾幌
8月20日厚岸町の上尾幌の牧場でクマに襲われた乳牛が発見された。
牛の肩に噛まれた痕があった。
足跡は約20センチのものが残されていた。
体毛も残されていたためDNA鑑定後OSOと判明。
OSOはこの時、体重500キロほどの乳牛に反撃されている。
2023年OSO18による被害(1頭)
2023年の6月28日現在のOSO18による被害は死亡1の合計1頭です。
2023/6/24 標茶町上茶安別
6月24日標茶町の牧場でヒグマに襲われ死んだ乳牛が発見された。
付近からは16~18センチの足跡が発見され、DNA鑑定の結果OSO18と判明した。