ヒグマの食べ物
ヒグマは雑食性で、ヒグマが利用する動植物は150種類以上もあります。
人身事故のイメージや、鮭を食べるイメージから肉食性と思われる方も多いようです。
実際は植物性の食べ物を7割以上食べている個体が多いようです。
目次
ヒグマは1年間何を食べているの?
ヒグマの食べ物カレンダーです。人を襲って肉を食べるというイメージを持っている方もいますが、植物性のものを多く摂っています。
しかし、やはり人を襲った後に食べるクマもいます。以下の記事を参照ください。
春の食べ物(3月~5月)
ザゼンソウ、フキやセリ科の草本類を食べます。
昨年落ちたドングリなども食べます。
冬眠明けはフキなどを好むため山菜を採りに来た人との事故が発生することもあります。
人が山に入る時期になると人が捨てたゴミを食べるヒグマもいます。
ゴミは必ず持ち帰りましょう。危険なヒグマを生み出すことになります。
セリ科の草本類はエゾニュウやアマニュウ、エゾノヨロイクサ、シラネニンジン、オオハナウドなどです。その他にもウド、イラクサ、スゲなども食べます。
夏の食べ物(6月~8月)
初夏にはアリやザリガニ、セミの幼虫、スズメバチなど動物質の物も良く食べます。
フキやセリ科の草本類も引き続き食べ、ヤマグワやサルナシ、シウリザクラ等の果実類も食べます。
利用していた草本類がなくなり農作物が実る頃や、8月中旬から9月のいわゆる[端境期]には電気牧柵のない農地の農作物を荒らすヒグマも出現します。
トウモロコシ、スイカ、ニンジン、水稲、ビートなど色々な農作物が食害されます。
エサの少ない時期には犬や牛を食害するヒグマも出ます。
羅臼の犬食いRTは2022年に捕獲されました。
標茶の牛食いOSO18は未だに牛を襲い続けています。
既に60頭以上の牛を襲っていますが老獪すぎて捕まりません。
秋の食べ物(9月~11月)
冬眠前の栄養備蓄のためたくさんの食料を摂取します。
秋にはブナの実(道南)やミズナラの堅果(ドングリ)、クルミなどを食べます。
その他にはナナカマド、コケモモ、ミズキ、ウド、タラなどの果実も利用します。
ヤマブドウやサルナシなどの果実類もごちそうです。
道東ではシカを食べるヒグマもいますが、自ら捕食することはあまりありません。
ヒグマと言えばシャケを捕ると言うイメージが強いですが、現在シャケが遡上するのは一部の川です。
ドングリとヒグマ
ドングリの豊凶作が秋のヒグマの出没に関連があると言われています。
そのため北海道では秋に山の実なり調査を行いヒグマの出没を予測しています。
調査しているのは、ミズナラ、山ブドウ、サルナシ、ブナ(道南)の4種です。
秋の山の実なり調査については以下をどうぞ。
シャケとマス
シャケとはシロザケのことで、マスはカラフトマスです。
カラフトマスは8月から遡上を始め、シロザケは9月~10月から遡上を始めます。
夏はヒグマにとってエサの少ない厳しい季節。
マスやシャケが遡上する地域のヒグマ達にとって、待ち遠しい最高の食べ物です。
ただ、海水温の上昇などで遡上する時期が遅れることもあり、そうなるとシャケやマスを待ち焦がれているヒグマ達にとっては非常に厳しく地域によっては餓死するヒグマも。
厳しい夏を乗り越える生命線でもあり、冬眠に備える大事な栄養でもあります。
近年遡上するマスが減っているそうで、ヒグマ達にはさらに厳しくなりそうです。
冬の食べ物(12月~2月)
冬は冬眠するので、冬眠中の約4ヶ月は基本的に絶食です。
道東はシカが増えており、シカを食べ冬眠しない個体もいると言われています。
ヒグマは食べ物が豊富にあり食物条件が良ければ越冬しないと考えられています。
そして、冬季に食物が十分得られなければ冬眠します。
冬眠しないに関する記事は以下を参照ください。
ヒグマの食性の変化?
ヒグマは雑食で環境に応じて食性を変化させます。
最近の研究でヒグマの食性が1860年付近から変化していることがわかりました。
シカやサケなどの動物質の摂取割合がその時期に急激に減少しており、草食性(栄養源の7割以上が植物性)へと変わったと思われます。
明治維新期のサケ漁や土地開発に影響を受け、更にエゾオオカミの絶滅により動物質が入手しにくくなった可能性もあります。
(ヒグマはエゾオオカミが仕留めたシカを奪っていた?)