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どんなクマが人を襲う?

どんなクマが人を襲う

人を襲うヒグマはどんなヒグマでしょうか?
ヒグマは積極的に無差別に人を襲うわけではありません。

ヒグマに襲われる人

ヒグマに襲われる人は大きく分けると次のようになります。

  1. 一般の人
  2. ヒグマの狩猟者(ヒグマの狩猟や駆除が目的)

クマが狩猟者を襲うのは、自分の身や我が子を守るためです。
※一般の方を襲う理由は「ヒグマは何故人を襲うか」をご参照下さい。

なぜヒグマは人を襲うか
ヒグマが人を襲うのには理由があります。 ほとんどのヒグマは人を襲うどころか、人間の存在を察知すると自ら去っていくのです。 目次1

一般人と狩猟者ではまったく襲われる次元が違います。
ヒグマが狩猟者を襲うのは自己防衛の為に反撃をするということです。
これは満2歳以上の個体となります。

一般人を襲うヒグマの種類

不意の遭遇以外で人を積極的に襲うクマは大きく分けると次のようになります。

  1. 子連れの母グマ
  2. 2~4歳の若グマ(亜成獣)
  3. 特殊なクマ(問題グマ/危険個体)

狩猟者への反撃と不意の遭遇以外で、一般人を襲うヒグマは上記にほぼ限られています。
成獣(5歳以上)は基本的に人を襲いません。
好奇心が強く積極的に人に関わってくるクマはほとんどが若いクマ(2~4歳)です。
そして、子連れの母グマが子を守るために攻撃をしてくることが非常に多いのです。

成獣も人を襲った事例は少ないですがあります。
[苫前三毛別事件]や、[札幌丘珠事件]などは成獣によるものです。
しかし両方とも手負いのクマ(危険個体)による事件でした。

どんなヒグマが一般人を襲うの?

円グラフで確認してみましょう。

人を襲うヒグマグラフ

子連れの母グマ

上記円グラフでは1973-2018年までの加害グマの性別はメスが4割以上占めています。
それは母グマがメスに含まれるからです。
母グマだとわかっている事件だけでも全体の25%以上を占めています。育児中の母は子供を守るために普段より神経質で凶暴になる傾向があります。
子連れの母グマは人間との不意の遭遇に驚き、あるいは子が人間に興味を示し近づいたりすると、子を守るために攻撃をしてくるのです。音を出して遭遇を避けるのが重要です。母グマがそばにいる可能性が高いため、子グマがいても絶対に近寄らないことです。

クマ対処法 ヒグマ対処法 子グマに近づかない

2~4歳の若グマ(亜成獣)

2~4歳の親から独立して間もないクマを若グマと分類します。
それまでの母グマと一緒に行動しているクマは子グマや幼獣と分類します。
上のグラフを見ていただくと若グマが3割以上を占めています。
成獣も4割以上ですが、成獣には母グマが含まれています。
日高福岡大のワンゲル部の事件はメスの2歳6ヶ月の若グマによるものでした。
1976年6月の千歳市で2名死亡、3名負傷させたクマもメスの2歳4ヶ月。
親から離れたばかりで好奇心が強く、経験値も低く、行動範囲が広く、餌場の確保もできていない若グマは人間と接近することが多いのです。
餌を求めて人里に下りてくることが多いのもこの世代です。

日高福岡大ヒグマ事件
1970(昭和45)年に日高山脈カムイエクウチカウシ山で起こった事件。 登山に行った福岡大ワンダーフォーゲル部のパーティがヒグマと

特殊なクマ(問題グマ/危険個体)

特殊なクマは、人間の食料の味を覚えてしまった問題グマや手負いのクマなどです。
一度人間の食料の味を覚えてしまったら、また人が持っている物を奪う可能性があります。
ヒグマは学習能力が高いので同じ場所に出没するようになります。
2001年札幌市南区定山渓で起きた死亡事故は8歳のオス成獣が男性を襲っています。
付近はゴミが目立ち、ゴミで餌付けされてしまったと思われる問題グマが人を殺しています。

これを防ぐためには、キャンプ場や山など行楽先での残飯をきちんと処理することです。
釣った魚や撃ったシカを放置するのもよくありません。
クマは鼻が良いので、深く埋めても掘り返します。
餌付けももちろん危険です。他の野生動物にも餌を与えてはいけません。
その食べ残しをクマが食べる可能性もあります。
人間のマナーの悪さが人を襲うクマを生んでしまう一因になっているのです。

手負いのクマは人間に対して恨みと恐怖心を持っているので大変危険です。
[札幌丘珠事件]や[苫前三毛別事件]等は猟師が打ち損じ手負いになった危険個体です。

札幌丘珠ヒグマ事件
1878(明治11)年に現在の札幌市で起こった事件である。 この事件ではヒグマを手負いにした猟師1名と開拓民の一般人2名、合計3名
苫前三毛別ヒグマ事件
大正4(1915)年冬、開拓民を悲惨な嵐が襲った。 死者8名、負傷者2名。巨大熊による殺戮は、まさに羆の嵐。 この事件はわが国の獣

※2013年4月にせたな町で山菜採りの女性を殺害、更に2014年4月に同町で山菜採りの男女を積極的に襲撃した危険個体が未捕殺でしたが、その後2014年夏に箱わなにより今金町で捕殺されたヒグマがこの危険個体であることが判明しました。
体長2メートル、体重230キロのオス7歳成獣でした。

[危険個体が人を殺傷した例]

  • 2014年4月せたな町:山菜採り女性負傷/オス♂7歳、前年人を殺害した危険個体
  • 2001年5月札幌市:山菜採り男性死亡/オス♂8歳。危険個体と思われる

成獣が人を襲った例

上述3種類(母獣・若グマ・危険個体)以外で、成獣が人を襲った例もあります。
性別・年齢が不明の加害グマも多く(人を襲った後逃亡し行方不明)、はっきりとわかる個体は少ないのですが、2000年以降だと以下のような事件があります。

  • 2017年10月白糠町:キノコ採り男性死亡/足幅が18cm⇒オス♂の成獣
  • 2015年2月厚岸町:山林作業中に負傷/足幅15cm、縦幅30cm⇒オス♂成獣
  • 2008年9月標津町:釣り中に死亡/その後捕殺⇒オス♂成獣と思われる
  • 2002年8月南富良野町:畑巡視中に負傷/道のデータでは成獣となっている

2017年の死亡事件は農作物を食べるために寝ていたヒグマと「遭遇」したのではと考えられています。被害者の側にヒグマの寝床があったようです。
2015年は山林作業中、地面から突然クマが飛び出てきて作業している方を襲いました。冬ごもり中のヒグマが穴の上に人が来たので「排除」しようとしたのでしょう。
2008年の死亡事故は夜間に釣りに行きヒグマと遭遇し攻撃を受けたものです。
その後捕殺されたとのことで、大きなオスだったことから成獣と思われます。
2002年は詳細はわからないのですが被害を受けた畑を巡視中にヒグマに襲われています。
北海道のデータでは成獣となっています。

山菜採り中の「遭遇」は非常に死亡率が高くなっています。
山菜採り中の死亡率については以下の記事をご覧ください。

山菜採りでヒグマに襲われた被害者の死亡率がすごい
ヒグマの人身事故被害者の行動目的の中で死亡率が圧倒的に高いものがあります。 2000年以降で最も人身事故が多いのは10月。全体の3

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