苫小牧市 Sさん体験談
体験談詳細
- 遭遇日:2003年7月6日
- 遭遇時間帯:午後4時頃
- 遭遇場所:苫小牧植苗地区無番地
- クマの大きさ:2m前後 推定体重約200kg
- クマとの距離:約3m
ご感想
当日正午頃より高丘浄水場ポンプ上上流の勇払川上流にて虹鱒釣をしましたが釣果芳しくなく植苗川へと移動しました。
PM3時20分頃赤丸ポイント辺りに車を停め身支度を整え釣り場へと向かいました。
目指す釣り場までは山裾を歩き30分程度、 距離は1400~1500m程度と思われます。湿地帯であり葦原の中の川幅2~3mの小河川です。
PM4時釣りを開始して第一投でいきなり30Cm超の虹鱒を釣り上げ次の用意に掛かった時対岸側より野鳥が飛び上がりました。
その時対岸正面方向より葦原を踏み込む音が致しました。対岸側より釣り場へアプローチする事は極めて困難な場所ですので直感で釣り人ではない事は理解できました。
過去何度も足を運んでいる釣り場であり狐、狸などの小型哺乳類の生息を確認していない場所ですので ヒグマである事はすぐ判断できました。
ガサガサという音が近づいて来た時に「人か?クマか?」と言ってみました。
その直後対岸の(と、言っても真正面3m弱の距離)葦原よりヒグマが顔を出しました。
ほんの僅かな時間(コンマ何秒でしょう)睨み合った後ヒグマが右足、左足とこちらに進んでくる体制をとったため 私は右手に釣り竿を持ったまま 思い切り両手を広げ「こらぁ~~~!!」と、大声を発しました。
ヒグマはビクンとして空かさず身を翻し私から見て右側の方向へ退散いたしました。
湿地帯の葦原の中を想像以上の速さで退散いたしました。その後私は大急ぎで釣り道具を片付け来た道を車へと戻り始めました。
ところが大変困った事に川を挟んで車の方向に件のヒグマは行っているため再度遭遇する恐れがあったことです。しかし戻る以外に手はありませんから大声を出しながら歩きました。
この時自分は絶対に走るまいと気持ちを落着かせながら歩きました。
もしも近くにヒグマがいて逃げるような足取りと判断されると攻撃を受けるのではないかと言う考えからでした。
ところが車にあと100mくらいまで戻った時件のヒグマが立ち上がってこちらを見ているのです。車との距離は10mも無かったでしょう。この時初めて生命の危険を感じました。
その時携帯を取り出し辛うじて通話圏内である事を確認し友人に電話を入れました。
一昨年ここへ釣りに来た時に湿地に車を埋めてしまい救助を頼んだことがありこの辺りでやっと携帯が繋がる事を 知っていました。
しかし友人は不在で連絡が取れず万事窮しました。ヒグマは動かず立ったままこちらの様子を窺っています。
その時私は携帯の呼び出し音を出してみました。大変静かな所ですしヒグマは人よりもはるかに聴力があると聞いていましたし私の声と違う周波数の携帯音で別な何かがいると判断してくれる事を期待いたしました。
期待通りヒグマは一気に川下方向(最初遭遇した方向)へ移動を始めました。
私は再度ヒグマが戻ってくるのではないかと言う恐怖感と必死に闘い車までの100mほどの距離を駆け抜けました。
車に飛び乗り湿地帯を抜け道路へ出た時に一気に身体が震えだしました。
さらにゴム製の釣り用長靴の中も背中も汗でビッシリ濡れている事に気が付きました。
今となって何故無事に戻れたか、逃げる事無く対処出来たかを私なりに考えてみました。
仕事の関係、釣りを通してハンター(鹿猟など)の友人がいて以前からヒグマと遭遇したら 絶対逃げるな、目をそらすな、それでも来たなら自分を強く見せろと教えられていました。それが忠実に守れたのは最初の遭遇の時、鳥が飛び立ったり対岸から人とは思えない音を確認できた事など時間的、精神的に準備する 余裕があったからにほかありません。
更に二回目の遭遇の際も距離が離れていた事が幸い致しました。
普段、この川へ釣りに入る時は鈴、爆竹、ナタを必ず携行するのですが、別な釣り場から軽い気持ちで入釣してしまった事で一切の用意が(ヒグマ対策)なされていなかったのです。己の安易さを悔やむと同時に事無きを得て今更ながら幸運に感謝しております。
ヒグマ遭遇場所画像・地図
管理人コメント
メールで体験談をくださった、苫小牧市のSさんの体験談です。
非常に緊迫感のある文面なのでご本人のメールをそのまま掲載させていただいた方がよいと思い、そのまま掲載させていただきました。
Sさんの適切な対応でヒグマを回避できたと思います。
このような緊迫した場面で冷静な対応をされてすごいなと思いました。
素晴らしい体験談をどうもありがとうございました。
色々な画像などもいただき、どうもありがとうございました。